2011年12月31日土曜日

「科学における知識生産プロセスの研究」WP#10-07_1


■ 「科学における知識生産プロセスの研究 ― 日本の研究者を対象とした大規模調査  からの基礎的発見事実 ―」

長岡貞男・伊神正貫・江藤学・伊地知寛博
   IIRワーキングペーパー WP#10-07_1(本論),WP#10-07_2(参考資料: 調査票・集計表),
   2010年11月           


科学における知識創造過程や科学知識からイノベーションが創出される過程についての、研究プロジェクトを対象とした体系的な実証研究を行うために、一橋大学イノベーション研究センターと文部科学省科学技術政策研究所は、日本の全分野の研究者を対象とした包括的な質問票調査(「科学における知識生産プロセスに関する調査」)を実施した。2009 年末から2010 年春にかけて質問票調査が実施され、約2,100件の回答が得られた。
 調査対象の約3分の1は被引用数上位1%の高被引用度論文をもたらした研究プロジェクトであり、約3分の2は通常論文(高被引用度論文を除く無作為抽出論文)をもたらした研究プロジェクトである。高被引用度論文産出群(通常群)では調査対象論文の回答者の70%(78%)が大学等に所属し、21%(14%)が公的研究機関に所属し、7.2%(5.7%)が民間企業に所属している。
 本調査は、科学にかかる以下の基本的な問いをカバーしている。
 (1)日本で活動する研究者による研究プロジェクトは、どの程度の頻度で純粋基礎研究(ストークスの分類で言えば「ボーアの象限」)にあり、どの程度の頻度で目的基礎研究(「パスツールの象限」)や応用研究(「エディソンの象限」)にあるのか。
 (2)着想から国際的な研究業績までにどの程度の時間を要するのか、この間の研究資金をどのように確保しているのか。
 (3)研究におけるグローバルな競争の状況や自らの研究の位置づけを事前にどの程度、研究者は認識しているのか。
 (4)研究においてセレンディピティはどの程度重要なのか、どのような研究でそれが生まれやすいのか。
 (5)日本の研究チームはどの程度に学際的、国際的なのか。研究者の組織間の移動はどの程度頻繁に起きているのか。
 (6)研究プロジェクトのマネジメントとしてどのような取り組みを行っているのか。
 (7)研究の成果を論文の他、どの程度特許化しているのか。リサーチツールの生産はどうか。
 (8) 研究成果をベースとしたイノベーションがどのようなルート(ライセンス、標準への貢献、産学連携研究、スタートアップ、技術指導など)で、どの程度の頻度で生じているのか。
  本ワーキングペーパーでは、調査の重要な基礎的発見事実と考えられる点を要約し、今後の調査課題を含めた含意を述べる。本ワーキングペーパーは分析の第一段階であり、これらの発見事実をもとに、今後更なる分析を進めていく。調査で得られた研究プロジェクトについての包括的なデータセットを活用し、また、書誌データや引用データなどとも組み合わせ、発見事実の背景にあるメカニズムや原因の解明に資する分析を実施する予定である。